漢江のほとりで待ってる


慶太は由弦がすぐに見つからない状況に、待たされることももちろん、苛立ちを抑え切れなくなった。

そして、

「正々堂々と話をしようじゃないか!二人きりで話したい。青木君のことも、盗難の件も!そして終わらせたい。別荘に来い」

と慶太から由弦に連絡が入った。

由弦は二人が心配しないように、

「ちょっとオレ、急用が出来たから出掛けて来るよ」

そう言って部屋を出ようとした。

「急用!?」と一条。

「由弦どこへ行くの!?私も一緒につ~」

珉珠が言い掛けたあとすぐ、

「あなたは待ってて?」

「お前まさか!さっきの電話」

「行かせてくれ!決着をつけないと。兄貴はそんな人間じゃない」

「お前まだそんなことを!」

「頼む!行かせてくれ」

その意志が変らないことを理解出来た。

「……はぁ、分かった。でも何かあったらすぐ知らせてくれ!」

「うん!分かった!彼女を頼む!」

「あぁ、任せろ!」

由弦は珉珠に笑顔を見せて、そのまま出て行った。

その背中に向かって、

「由弦!」

珉珠は叫んだ。


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