漢江のほとりで待ってる
「……はっ。何でも容易く手に入れた?愛されない?ふざけるな!愛されなかったら傍にも置いてもらえないと思うよ!オレは父さんと一緒にいたくてもいられなかった。傍に置いてももらえなかった!兄貴には、父さんだけじゃなく、義母様や椎名おじさんもいた。ちゃんと愛されてるじゃないか」
「何だと!?」
「そうだろ?オレはそれから十年以上、親も兄弟もいない環境で育った。愛人の子だから仕方ないと諦めていたけどね。それでもオレはずっと、優しかった兄貴に憧れてた。兄貴みたいになりたいと思ってた。だから失望させないでくれ」
「それがどうした!お前が勝手に失望しようと私の知ったことではない!お前が勝手に私に憧れていただけのことだろ?あ!それと日本を離れるなら、彼女も諦めろ!元々彼女はお前の憧れた兄貴、私のものだから!何だったら~彼女を諦めるなら、日本に置いてやってもいいぞ?従わないのなら、青木君を無理矢理にでも私のものにする!」
「はぁ~~。好きにしろよ。それと彼女は物じゃない!オレは何もいらない。けど、彼女のこと、くれてやる!ってあの時言った言葉は撤回する。彼女だけは離さない!残念だけど時間の無駄だ。待たせてる人がいるから帰るよ」
由弦はそのまま別荘を出て行った。
「くそっ!!」
慶太は慌てて部下に電話をした。
「何としてもPCも彼女も奪って来い!!何とかしろー!!あいつを止めろ!」
半狂乱の慶太が叫んだ。