漢江のほとりで待ってる


慶太の所にも由弦の件で一報が入った。

声が出なかった。

すぐに病院に向かおうとしたが、「どの面下げて行けると言う?」その思いが向かい掛けた足を留まらせた。

負い目を感じ、躊躇う自分と、由弦を心配する気持ちとが葛藤する。

でも慶太の心はもう病院へ向かっていた。

―――― 椎名おじさん……!?おじさんは大丈夫なのか!?どこにいるんだ?病院?警察?

慶太が混乱を起こしている所に、雅羅がやって来た。

彼を見るなり、両手で頬を包み、

「大丈夫!あなたは何も気にしなくていいの。何も心配しなくていい。可哀想によほど怖い思いをしたのね?」

「母上……由弦が……」我に返った慶太。

「大丈夫。私が何とかしてあげる!あなたのことはこの母上が守ってあげる!由弦さんのことも何も気にしなくていいの!だからあなたは堂々として明日からまた会社に行くの!分かった?」

「でも……」

雅羅は首を横に振って、

「慶太さん、大丈夫!すべてうまく行くから!傍にいてあげるから、今夜ゆっくり眠りなさい」

なだめるように言った。


< 142 / 389 >

この作品をシェア

pagetop