漢江のほとりで待ってる
警察では、椎名は取り調べで、「事故は自分が起こした」と自供した。
単独では無理な現状だと、事故のことを警察に問いただされると、部下に命令して由弦坊ちゃんを狙うよう指示したと答えた。
動機は、「弦一郎氏の愛人問題に苦しむ雅羅奥様と、父に愛されない慶太坊ちゃんが哀れで、相談に乗っているうちに情が湧き、ただただ力になりたい!その気持ちだけが大きくなり、今回の犯行に及んだ」と答えた。
弦一郎と慶太のことは触れなかったものの、すべては自分が一人で行ったと付け加えた。
世間では、由弦の事故のことがニュースになり、
「故意に起こした事故は、執事の犯行!その裏に何が!」
さらに、
「後継者争い再び勃発!一人の女性を巡って人情泥沼化!」
と書き立てた。
雅羅の怒りはさらに激しくなった。
「こんなにも世間に恥を晒して、止めも刺さずに逃げた!役立たず!慶太の将来が台無し!」
椎名が最後に妻と子への愛情として、全てのことを終わらせようと、一人罪を被った。その愛情も、雅羅には伝わらなかった。
それどころか全ての責任を椎名に押し付けようとしていた。