漢江のほとりで待ってる
珉珠は、美桜と別れたあと、社長室に戻り、何気に慶太の話に触れた。
「慶太に言われたのかね?」と弦一郎。
「いいえ。副社長のことを人づてに聞いたので」
「そうか、慶太は無理だろう。踏まれても踏まれても何度も起き上がる、雑草のような由弦とは違って、何不自由なく育った温室育ちの慶太には、過酷だろう。だか、帰る場所まで奪われてない分、有り難いと思えるようになってもらいたい」
珉珠は俯いたまま話を聞いていた。
「はぁ~!情けないが、戻って来るようそれとなく、君から伝えてくれないか?こんな結果しか導けない私も、かなり愚かしいが」
「かしこまりました」
珉珠は微笑みをこぼしながら答えた。
「あ!このあと由弦のいる、B.A.Bを訪れようと思っている。青木君も一緒に来なさい」
珉珠は少し緊張して、一礼をした。
二人が、B.A.Bに着き、由弦のいるマーケティング部にそっと足を運んだ二人。
いつも忙しくしている由弦は、今日はたまたまデスクで作業をしていた。
そこにいる、周りのみんなと和気あいあいとして、笑顔を見せる由弦を見て、弦一郎は安心し笑顔さえ見せた。
珉珠もまた、同じように見つめた。
―――― あなたはどこででもやって行ける。副社長と違って柔軟性を持っている。何よりも強い!だから一人でも大丈夫ね。ううん?あなたには美桜さんもいる!あなたのことは遠くで見守ってるから。ずっとずっと応援してる。大好きよ、由弦。そしてありがとう。
自分にはもう、笑い返してくれなくなった淋しさも込めつつ、珉珠は由弦を見つめながら、心で呟いた。
由弦とのペアウォッチを外し、そして珉珠はある決心をする。
由弦が元気なのを確認すると、弦一郎と珉珠はそっと本社に帰って行った。