漢江のほとりで待ってる
由弦に電話をしたあと、珉珠に連絡をして、一緒に本家に戻った慶太。
弦一郎と雅羅を呼び、改めて高柳に戻って来た旨を伝えた。
そして慶太と珉珠から再び、婚約の報告を受けた。
それに驚く弦一郎と雅羅。
「何を考えているの!慶太さん!」声を荒げる雅羅。
「由弦のことを心配されているようですが、あいつにはもう報告しています。問題は解決済みです」
「そんな簡単に!珉珠さん?本当にそれでいいの?」
「はい。由弦さんは、いえ、専務はもう大丈夫です」
そう言いのけた珉珠の顔は、どこか浮かない表情をしていた。
雅羅はその表情を見逃さなかった。
「そうかもしれないな。二人が言うんだ、好きにさせようじゃないか。この間私も由弦を見て来たが、周りとも笑顔で話していたし、仕事にも熱心に取り組んでいた。あとで江南課長にも聞いたらそう言っていたから、大丈夫だろう。今は私達が一日も早く高柳の信頼回復に努めるしかない。あとは、由弦の記憶が戻らないことを、今後は祈るばかりだが」と弦一郎が言った。
「あなた、なんてことを!記憶が戻らないことを祈るだなんて……」
「例え記憶が戻ったとしても、あいつは現実を受け止められるだけの強さを持っているから、大丈夫ですよ」と慶太。
「そうかしら?今慶太さんは浮かれていて、周りが見えないだけなんじゃなくて?やはり、記憶が戻るまで待つべきだわ!いえ、由弦さんの気持ちも確かめないと……」
雅羅は本当に由弦のことを心配していた。
「母上らしくない。私は別に浮かれてなんていませんよ?それに今回は、珉珠くん自ら、私の元に戻って来てくれたので。私は彼女の気持ちを信じたい。あ、クリスマスパーティーは家族だけでと考えています。なので、その前に盛大に婚約パーティ-を行いたいと思っています」
「由弦にもちゃんと報告したか?」
「はい!必ず出席するよう言っておきました」
「そうか、ならいいだろう。日取りは自分達で決めなさい」
「は、はい!父上!」
父とも向き合えるようになり、相談もし合えるようになったことに、慶太は喜びを感じていた。
また、弦一郎も慶太との、父と息子の関係を実感していて、同じように嬉しかった。
長年の確執が溶けて行くように思われた。
あの意地の張り合いは、まるでなかったように、慶太と珉珠の結婚話は進められて行った。
一人雅羅だけが、何か起こりそうで不安を隠せなかった。
二人が帰ったあとも、弦一郎に、二人の結婚をやめるように、そう二人に話してほしいと懇願したが、弦一郎は聞く耳を持たなかった。