漢江のほとりで待ってる
「何で仲里さんが泣くんだよ」
「だってあんまりな扱い、可哀想すぎます。幼い子がどんな思いで……」
「ごめん、変な話をして」
「いいえ。でもこのこと、社長はご存知ですか?」
「ううん。こんな話、誰にも言ったことない。言ったところで意味ないし、何とか生きて来られたし」
「そんな~!」
「たまに義伯父がくれる、わずかなお小遣いを貯めてやっとそこから抜け出し、韓国へ飛んだ。生きてる意味が分からなくて、衝動的に、目の前に広がる大きな河に飛び込もうとしたら、女の人に助けられたんだ。その人は大きな声で、止めなさい!お願い!って叫びながら、オレの体を引っ張って、欄干から引き離した」
由弦は、仲里に話しながら、その当時のことを思い出していた。
―――― 「今死んだら、その虚しさや辛さ、誰にも伝えられずに苦しんだまま、魂だけが念を残してこの世に彷徨ってしまう!それの方が虚しいじゃない!一度くらいその気持ちを相手にぶつけなさい!」
その女性は訳も分からず、由弦をなだめようとしていた。
由弦は呆気にとられながら、その女性を見つめる。
「どんな辛いことがあったか分からないけど、自ら命を絶とうなんてしないで!しっかり前を見て!未来は今ほど暗いもんじゃない!今よりはずっと明るいはず!だから、生きて自分で思い通りの未来を描くの!でも死んでしまったら何も意味がない。忘れられてしまうだけ!死ぬ勇気があるなら一度でも相手にやり返すの!死んだら相手の思う壺。生きてたら何だって出来る!死のうなんて思わないで!苦しいながらも、この漢江の橋を歩いて渡って来たんでしょ?その力があるのなら大丈夫!越えられないものなんて何もない!それに生きていたら、私達もまた会えるかもしれない」
――――
由弦は我に返り、
「そんなことをその人から言われた。その女の人とはそれ以来会うこともなかったけど。何かとても衝撃的だったんだ。それで、なんとか生きてみようと思った」
「知らなかったです、そんな過去があったなんて……高柳専務、いっつも笑ってたから」
「ふっ。何でだろ、仲里さんには話せた。あ、このことも内緒な?でも、ホント、最近その頃のことを頻繁に思い出す」
「後遺症のせいじゃないですか?」
「どうかな」
「高柳専務……まだ青木さんのことを?」
「そりゃ好きだよ、今でも。忘れられるわけない。初めて会った時から、勝手に運命感じてたから。でも深追いしたり、取り戻そうなんてこれっぽっちも思ってない。今はただ幸せを願ってる、それだけだ。ただ、心残りは、何だろな、やり切れない。来世には紡げなかったな」
「来世?紡ぐ?」
仲里は、聞き返したけど、由弦には届かなかった。
未だに、その過去におびえて、まだ珉珠を好きでいる、その二つの狭間で苦しんでいる由弦をとても心配した。
仲里はとても胸が重かった。
誰にも言うなと言われていたものの、あまりの惨い話に、自分一人では抱えきれず、約束を破る覚悟で、由弦の親友である一条には話した。