漢江のほとりで待ってる
試合終了後、慶太は脚光を浴び、珉珠とツーショットを取材陣からせがまれ、その仲睦まじい姿を披露した。
弟、由弦とも固い握手を交わす姿もお願いされ、慶太は調子に乗った。
「よく頑張ったな?由弦!私が本気を出したらこんなものだ!」
「勝利おめでとう」
言葉を交わした二人。
「あ!それと、来年の五月に式を挙げます」
気持ちの良くなった慶太は言った。
これは由弦も驚いた。
マスコミ陣は由弦を押しのけて、慶太にカメラを向けた。
上機嫌でそれに対応する慶太。
珉珠は困惑していた。
スタンドで見ていた仲里は、唖然とした。
「副社長はおめでた続きですね~」と甲斐が言う。
「はっ!私が本気を出したらって、誰が見ても八百長じゃない!よくもあんだけしゃあしゃあと言えたもんだわ!」
仲里は呆れていた。
全ての取材も終わり、各々帰ろうとしたその時、慶太は由弦を呼び止めて、握手を求めて来た。
それに応えた由弦に、
「今日はお疲れ!」
そう言うと、由弦を引き寄せ耳元で、
「クリスマスイヴの夜、彼女を抱いた、いい声で喘いでたよ」
囁いたすぐ後、手を離して憎々し気に笑った。
思わず由弦は慶太の胸ぐらを掴み、「このっ!!」と叫んだ。
まるで珉珠を軽く見ているような、彼女に恥をかかせるような慶太の発言が許せなかった。
でも周りには、慶太の「お疲れ」のあと、いきなり由弦が負けたのが悔しくて、飛び掛かったように見えた。
それも慶太の計算済み。
その光景を目の当たりした、周囲は騒ぎ出した。
慌てて、珉珠と仲里が止めに入ったが、慶太がさらに、鼻で笑い、「何度もせがむんだ」と小声でいい、由弦を煽った。
慶太の胸ぐらの掴んだ由弦の手は弱まるばかりか、さらに強くなり、今にも殴りかかりそうだった。
その時、「いい加減にして!!」と珉珠が叫んだ。
由弦が珉珠の方を向いた瞬間、彼女は由弦の頬を殴った。
一瞬、何が起こったか分からかった、突然のことに、呆然とした由弦。
「健闘も称えられないなんて最低!情けない!だから年下は嫌いなの!」
由弦を睨みつけて、珉珠は言った。
去ろうとした珉珠の腕を、由弦は思わず掴むと、その手を思い切り振り払った。
その時に、はめていた婚約指輪が、由弦の顔を傷付けた。
由弦は顔を背けた。
珉珠は一瞬ハッとなったが、あえて気遣うことなく、慶太の背中をかばうように、手を添えてそのまま行ってしまった。
慶太は肩越しに由弦を見て、鼻で笑った。
左頬からじんわりと血がにじみ出ていた。
その場に立ち尽くす由弦。