漢江のほとりで待ってる
去って行った、慶太と珉珠。
慶太は、背中に珉珠の手を感じながら、
「嬉しかったよ、珉珠くん、君があんな風に由弦を跳ね付けるとは」
「副社長を殴りそうな勢いでしたので」
「無理もない。得意の野球で、あんな無様な姿を晒した上に、負けたんだからな。君の言うようにホントに由弦は情けないよ。成長してない子供だ」
「ほんとは自分に言い聞かせてる部分もあったんです。いつまでも断ち切れない思いを引きずって」
「なら、わざと由弦のためにあんな態度を?」
「……」
「やっぱりまだ由弦を?ならなぜ君は私と?」
「では、副社長はなぜ私なのですか?」
「それは~決まってるじゃないか!君を愛して」
「違います!今もまだ、由弦からコレクションである私を、奪い返したいだけ!彼の存在をどうしても認めたくないだけ!私に向けているのは愛ではなく、執着という、ただの彼への嫉妬心!それが彼を痛めつけるための、くだらない原動力となっている。なら私は止めたい!他へ目を向けられない可哀相な副社長を。救いたい、その度に傷付かなければならない由弦の心を!」
「そのために私と?」
「……はい」
「私と結婚をすれば、それこそ由弦はもっと深く傷つくだろう」
「彼なら大丈夫!きっと乗り越えてくれる。それに、恋愛の傷は、その時は深くても時間が癒してくれます。そして時間が経てば、傷も癒えた頃に、運命が動き出し、彼に新しい出会いが待っています」
「好きでもない私と一緒にいるのか?私といれば否応なしに由弦とも顔を合わせる。その方が忘れられないだろう?」
「いいえ!私達は互いの幸せを願える。結ばれないと分かってるなら尚のこと。そして私は見届けたい、彼が幸せになるのを。それと、副社長が前のように自信に溢れた高柳慶太に戻るまで。寄り添えばいつか情は愛に変わる。だから私の心も時間に委ねます」
冷静に話しながらも、珉珠の目から涙がこぼれていた。
「だから私と寄り添うというのか?青木君……」
珉珠は慶太と会話をしながら、由弦を殴ったことを思い出していた。
立ち尽くし、自分達を見送っていたであろう由弦の気持ちを思うと、胸が痛かった。
でもそれも全て由弦のためだからと、何度も何度も自分に言い聞かせるしかなった。