漢江のほとりで待ってる
「この話はまたの機会にして、今日は新年始まりの日ですから、とことん飲んで楽しみましょう」
弦一郎は空気を変えようとした。
そこへ遅れて、慶太と珉珠が現れた。
空気は一変し、二人の婚約に皆は祝福した。
二人は一通り挨拶も終えた。
珉珠は由弦が来ていないことに、正直ホッとしていた。
由弦はそのことを察していたから、あえて本家に挨拶へ出向くのを避けた。絵や仕事に没頭した。
「由弦さんが来ないことに、胸を撫で下ろしながらも、何か罪悪感を覚える自分がいるわ。あの子を蚊帳の外にしてしまってる」
雅羅がぽつりと言った。
その言葉に、一同、思い当たる節があるのか、一斉に黙った。
「あとで由弦にも来いと言っておこう」弦一郎はそっと呟いた。
「新しいお重に綺麗に盛り付けしましょう」雅羅が言う。
「なら、私達もそれまで残ります」慶太が言うと、
「いや、君たちは控えた方がいい」と弦一郎。
それ以上慶太は何も言わなかった。
本家では、クリスマスイヴの時のように、寒さも凌げる暖炉もあり、豪華なおせち料理もある、そしてお酒も並んでいた。
横を見れば、必ず誰かがいた。
そんな暖かな場所とはかけ離れた場所で、由弦は一心不乱に絵を描き続けていた。
その日の夜、弦一郎は由弦に連絡をしたが、応答はなかった。
次の日も、その次の日も弦一郎は電話するが、由弦が出ることはなかった。
「完全に避けられているな」弦一郎は悟った。
年が明けてから、寝る間も惜しんで作業に臨んだ由弦の体は、もはや悲鳴を上げていた。
更に月は流れ、五十周年記念、お菓子の大博覧会イベントの開催の告知が、ネットやCMで放送され、その出来栄えにも、かなりの評価を受けていた。