漢江のほとりで待ってる
由弦の展覧会に、お忍びで、あのクリストファーが来ていた。
一条は彼を見つけ、声を掛けた。
そして、クリストファーに、由弦がステレオグラム(目がよくなるでお馴染みの画像)やトリックアートが得意なことを話し、その絵の一部のどこかに必ず、ある文字が隠されていると一条は言った。
自分と由弦を含めた、会社創立メンバー五人の友情の証として、各々が、何かをするにあたって、いつも覚醒という文字を刻む話。
由弦の絵を指差して、クリストファーに、それがどこに描かれているか教えてやった。
それを見てクリストファーはびっくりしていた。
「高柳の絵を盗作しようと思ったら、この文字がないと、またこの意味を知っていないと、誰も盗作出来ないってことなんだ。それと、この覚醒の文字もオレ達が駆使して作った特殊な文字だから、描き加えただけじゃダメなんだな。ま、あの時、わざわざ、盗み出した証拠を突き付けなくても、この事実だけで十分証明出来たんだけどね?けど、確固たる証拠ってやっぱ必要だろ?」
一条は絵を見つめながら言った。
クリストファーは苦笑しながら、彼は元気か?と尋ねた。
その答えに一条は躊躇ったが、あえて由弦の現状を話した。
それを聞いてクリストファーは、そうなったのも、自分にも責任があると深く心を痛めた。
「恨んでないともうよ。高柳ならきっと、クリストファーに絵を描き続けてくれと言うはずだし、それが罪の償いになる」と一条は付け加えた。
それを聞いてクリストファーは納得した。
「彼は天使だから……」と。
開催初日、誰もが今回の総合プロデュースでもある、若き天才クリエイター、高柳由弦が出て来るのを心待ちにしていたが、そこに由弦は現れることはなかった。
また各マスメディアは、
「あのCGデザイン界の偉才!と言われた高柳由弦の世界観が溢れ出た展覧会!大盛況!」
「購入希望者続出!!若き天才クリエイターは蘇った!」
などと報じた。
あの盗作の件で、CMを打ち切ったり、コラボやキャラクターを手掛けたものを一切取りやめ、由弦に冷たく背中を向けた企業達が、ぬけぬけとまた仕事の依頼を持ち掛けて来た。