漢江のほとりで待ってる

そこからとぼとぼと歩き、気付けば漢江大橋に来ていた。

立ち止まり、漢江をしばらく、ぼ~っと眺めていると、ふと急に、珉珠に殴られたシーンが頭を過った。

左胸がぎゅ~っとまた苦しくなった。

そうなったら、辛い記憶は次々と思い出された。

婚約パーティーのあの日のことや、入院していた時に、婚約すると報告して来て、珉珠が嬉しそうに指輪を眺めていたこと。

どうしても、珉珠への気持ちが断ち切れない。

こんな女々しい自分が、ホントに心底嫌になる!

忘れようとすればするほど、彼女への思いが溢れ出す。

淋しさが、切なさが日々強くなり、胸が苦しくて耐えられなくなる。

何も拭いきれない。

一度は互いに誓い合ったのに、記憶を失くした自分のせい?

だったら、思い出さなければよかった。

そすれば、こんな思いをせずに済んだはず。

いや、それ以前に事故に遭わなければよかった。

そんなことがなければ、彼女と笑顔でいられたのに。

何で?何でこんなことに?事故は誰のせい?

……!!自分を陥れた奴らは、何もなかったように笑って暮らしている。

あいつは、自分を好きだった人を奪って行った。

「いい声で喘いでたよ、何度もせがむんだ」

慶太の声が過った。

忘れようとここへ来たのに、沈めていた怒りが、また燃え上がった。

由弦は、母の形見の指輪見つめ、

「ごめんね?母さん。必ず傍に行くから、少しの間待っててほしい」

そう言うと、その指輪を漢江に思い切り投げた。

―――― オレから奪ったものを全て奪い返してやる!お前達が大切にしているものを、目の前で壊して粉々してやる!

珉珠への愛情は憎しみに変わり、逆襲の炎に包まれた由弦。

由弦の復讐がはじまる。

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