漢江のほとりで待ってる

博覧会の場では、依頼をした菓子メーカーの社長も来ており、今回の由弦の活躍を高く評価した。

由弦と直接話をしたかったが、当の本人が出席していないことに、とても残念がった。

弦一郎とも軽く世間話をして、機会があれば必ず、由弦に会いたいと希望した。

その話をそばで聞いていた慶太が、すかさず挨拶した。

自分がその弟の兄であること、結婚を控え、厳しい状況の中、会社を盛り立てている、次期社長をアピールした。

弦一郎も、由弦との関係を気に揉みながらも、今、慶太との親子関係が修復して来た方を重視し、また結婚と、新社長就任の件もあり、慶太の後押しに必死だった。

だが、その菓子メーカの社長は、あまり慶太の話を聞き入れず、むしろ批判的とも取れる発言を、慶太にぶつけた。

「私は、空気の読めないタイプはあまり好ましくない。あと根性だけで乗り切れると思っている輩も好きでない。事を収めるため、長期座り込み土下座する人間も好きでない。まぁ、君はそこには当てはまらないがね?ただ反省、謝るなら、きちんとした解決策を以てそれを証明する人間が好ましい。世間を騒がした盗作の件、君は弟のために何をしたのかね?彼の信頼回復に貢献したのかね?君は何を基準に、自分は罪を償ったと思っているのかね?私は見込み違いをしていたのか、随分と君を高く評価していたよ。だが今とても残念な気持ちだね」

「えっ!?」

慶太は思っていた言葉と違うものが返って来て、初めて動揺した。

「どんな場面でも状況でも、物事に動じず冷静に判断して来たはずなのに、その君はもうここにはいない。現に今君は私の言葉に対する返事は、小学生以下だ。今の小学生はしっかりしているからね」

「いや~うちの息子も、結婚を控えておりまして、舞い上がっている所もあります」

弦一郎が慌てて間に入った。

「理解が出来ませんな。プロデューサーでもあり、息子や弟がこの場にいないことを心配しないなんて。本来なら一番に彼がここにいなければならないはずなのに。深い事情がおありなのでしょうが、またお身内のことは私には関係ありませんが、人として、最低限度の礼儀やわきまえを持たない人間とは、関りたくありませんな」

弦一郎は苦笑いをした。

慶太は屈辱を感じ、言葉が出なかった。。

「では私はこれで失礼させて頂きますよ。あ、そうだ、近いうちに本当に由弦君とまた会いたいと思っております。期待して待っていると伝えて下さい」

深々と礼をして社長は去って行った。

弦一郎もまた同じように礼をして見送った。

慶太は言い返すことも、見送りも何一つ出来ず、突っ立ったままだった。

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