漢江のほとりで待ってる
「ミンジュ、お誕生日おめでとう。あなたの幸せ、誰よりも心から願ってるわ」
その日一番に、母からのメッセージが入っていた。
三月十七日、博覧会初日は、奇しくも珉珠の誕生日の日でもあった。
忙しくて、スマホを見る時間もなかった。
言葉数は少なかったけれど、とても温かな気持ちが込められていた。
母なりの自分に対する精一杯の愛情と分かった。
その日の夜、慶太は乗り気じゃなかった珉珠を、半ば強引に食事に誘った。
サプライズで高級レストランに、珉珠の誕生日祝いのために予約していたのだ。
慶太は、自分の気持ちを押し付けるだけで、その時々の彼女の気分も伺うことなく、表情すら気付くこともなかった。
「クリスマスの時には、色々あって渡すことが出来なかった。珉珠君、誕生日おめでとう」そう言うと、ペアウォッチをプレゼントした。
ドヤ顔で、自分で中味を開けて見せた。
珉珠はそれを見た時、心苦しく思った。思わず苦笑いをした。
由弦とのペアウォッチに対抗して、あえての時計だった。
珉珠は無心で受け取った。
その頃、由弦は、キムおばさんのところから、ひたすら歩き、漢江のほとりに来ていた。
公園のベンチに座り、あの日の彼女を待った。
きっとまたあの人に会えるような気がして。
―――― 生きていたらまた会える。
その言葉を信じて。
待って待って待ち続けた。
ひたすら待った、何時間も待った。ずっとずっと。
するとそこへ、予期せぬ雨が降り出した。
冷たい夜の雨。それでも待った。
びしょ濡れになっても待った。
でも、あの人は来ることはなかった。
由弦は、現実を思い知らされる。
いいや、会えない確率が高いことだって分かっていた、でも信じたかった、奇蹟を。
なんて虚しい雨。
その時、珉珠の顔が思い浮かんだ。
―――― 逢いたい、珉珠さん……
雨は降り続く。
自分に傘を向けてくれる人など誰もいない。
あの人は来ない。
やはり奇蹟などない。
由弦は絶望の中にいた。