漢江のほとりで待ってる
自分のアトリエに戻った由弦は、重力に任せ、ソファに座った。
と同時に、突然、虚無感に襲われた。
いつもなら作業に追われていた時間。それもなくなった。
胸にぽっかりと穴が空いたような?いや、感情なんて、ホントはもうとっくの昔にどこかに置いて来た。
束の間の幸せや家族なんて、自分には有り得ない。
母親が死んでから、ずっと傍には誰もいなかった。
ただ幻を見てた。
これがホントの、自分のあるべき姿だと、思い知らされるようだった。
なぜだが、勝手に涙が頬を伝う。
しばらくぼ~っとしていると、次々と由弦の耳に声がまとわりつく。
―――― 珉珠君と結婚することになった。いい声で喘いでたよ
耳元で、まるで悪魔が囁くのように、またあの時の、慶太の声がした。
それから、
―――― だから年下は嫌いなの!
次は珉珠の声。
―――― あなたでは誰も幸せになんてできないんだから。
雅羅の声。
―――― お前の方から身を引いてくれないだろうか。
弦一郎の声。
盗作の件で疑いを掛けられた時、追い詰められ苦しんでいた自分に、父が放った言葉。
そんな父が、家族と言った。
家族!?今更……こんな気持ちになるって分かってたのに、何で本家へ行ったんだろう、由弦は行ったことを後悔した。
オレは何を期待してたんだろう……
夜の暗闇は、昼の時よりも、一層、哀しみと孤独感を増幅させた。