漢江のほとりで待ってる

本社には、ビシッとスーツに身を固めた、戦闘態勢に入った由弦の姿があった。

社長室に現れた由弦は、冷ややかな表情からも分かるように、全身から、殺気さえ漂わせているようだった。

その姿を見た時、初めて怖いと、珉珠は思った。

「高柳のために改革を行いに来ましたよ。まだ、オレは代表取締役兼専務ですよね?」

「……ああ」圧倒されながら答える弦一郎。

「なら決定権はオレにもあるってことだ。では、はじめの改革は、早期希望対象者を募りましょう。ふっ!業態の再構築をはかりましょう?何なら~リストラ対象者のリスト、オレが作ろうか?給料泥棒なんて腐るほどいる会社だ!人の足ばっかり引っ張って、命まで狙うような人間もいる、そんなの怖くて仕事も手につかないでしょう?」

冷めた目で由弦は言った。

「由弦!何をしようとしてるんだ!私が気に入らないのなら、私は喜んで社長を辞めてお前を社長にする!だから馬鹿な真似は止めなさい!」

「馬鹿な真似!?それをさせたのは誰だよ!喜んで?違うだろ!兄貴にならでしょう?それにもう遅いですよ、社長!せいぜい可愛い息子の副社長をかばってやってください。それと~」

由弦が続けて言おうとした時、慶太がやって来た。

「何考えてるんだ!由弦!」

「あ~、いい所に副社長、来られましたね。何をって、この会社で実績が欲しくて働きに来たんですが?それが何か?えっと、どこまで話したかな?あ~そうそう、青木さんをオレの秘書にしてください!今の所、それくらいかな?」

そう言うと、珉珠の顔を見て、右口角を上げて、憎々し気に由弦は笑った。

珉珠は悲し気な目で由弦を見た。

慶太に当てつけのため、珉珠を自分の傍に置こうと考えた。

「そんなこと私が許さない!」と慶太は叫んだ。

「あなたには何も決定権はない。ただのお飾りだ。この先もずっとオレの言いなりだ!」

弦一郎達が、言葉を失う中、高笑いをしながら由弦は去って行った。

そのあとを追い掛ける珉珠。

「専務!お願いですから、もし何かされようとしているなら、お止めください」

珉珠を無視して行こうとすると、

「由弦!お願いだからバカな真似はしないで!」

「バカな真似!?ふざけんな!どっちが先に仕掛けて来たんだ!!どんなつもりでオレを見てるんだ!バカにしやがって!」

「バカになんてしてない!!」

「なら兄貴のためか!お断りだね!あんたらが地団駄踏んで悔しがる姿を見たいだけなんだよ!オレが味わって来たおんなじ思いを味合わせてやるよ!」

「由弦!」

珉珠の心配を余所に由弦は行ってしまった。

< 261 / 389 >

この作品をシェア

pagetop