漢江のほとりで待ってる
その場をそこそこに切り上げ、弦一郎達の方に由弦が近付いて来ると、紫苑は瞳を輝かせた。
「由弦君、この度の君の活躍は目を見張るものがある!期待以上の成果に感謝するよ!弊社の五十周年に花を添えてくれてありがとう!」
と大手菓子メーカーの鷹司社長が声を掛けた。
「ありがとうございます。ご期待に添えて何よりです」
「博覧会も三ヶ月間という期間だったが、期間延長の声が多くて、また夏にでも再開催したいと思っている。その時はまたお願いしたい」
「期間延長のお話は聞いております、こちらこそ宜しくお願い致します」
由弦が言ったあと、
「もう~、お爺様ったら!仕事の話ばかりして!今日はわたくしに由弦さんを紹介してくださる約束でしょ!」
紫苑が待ちきれず、鷹司の耳元で言った。
「そうだったそうっだった、悪かった紫苑。由弦君、これは私の孫娘の紫苑と言って、君の絵の大ファンなんだ、君に会いたいとずっとせがまれていてね~、今回やっと何とか会わせることができて、祖父としての面子を保てたよ」
「はは、そうですか」
「初めまして、鷹司紫苑と申します、お会いするのを心待ちにしておりました」
紫苑は目を伏せて笑った。
「初めまして、高柳由弦です。フランス人形のように可愛らしい」
紫苑を真っ直ぐ見つめて笑いながら言う由弦に、紫苑は頬を赤らめて俯いた。
「僕の絵のファンだとか?嬉しいです、ありがとうございます」
「そ、そんなに見つめないでください」
「はっはっは~っ!いつもお喋りな紫苑が照れておる、恥かしくて由弦君の顔もまともに見られたいようだ」鷹司社長が上機嫌で言った。
「もう!お爺様、あまりからかわないでください」
そんなやり取りを見ていた珉珠は、自分には見せない、彼女に向けた由弦の大人びた表情や、優しい眼差しに、少し妬けた。
しばらくの間、由弦には出会いなど、訪れないと思っていた分、淋しい思いもした。
「こんなにも早く由弦の運命が動くなんて、君の言っていた運命が動き出す話、意外と早く訪れたみたいだな。君の時間も早く動くといいんだが」
慶太は珉珠の心を追い詰める。