漢江のほとりで待ってる
「大丈夫?青木さん。もし何だったら今日はもう帰ってもいいよ?」
「いえ、大丈夫です。私……とんでもないことしてしまったかも」
「どうして?相手が謝罪したから許せばよかったって意味?」
うなずく珉珠。
「それは違う!さっきのは笑って済ませる問題じゃない。今セクハラやパワハラは、社会問題にもなってる。あれもこれも認めてたら!という輩もいるけど、それほど声が挙がるってことは、今まで、見て見ぬふりや、その問題に対して揉み消し来た証拠なんだよ!そのツケが回って来てるだけ。時代を作って来たと自負してる櫻木部長にしたら、女性が力を持つってこと自体、プライドが許さないんだと思うよ。でも青木さんは間違ってない!この件に関して、我社は全面的にキミを守る姿勢でいる!」
「すみません。ありがとうございます」
「うん。謝らなくていい。ところで青木さんは緑茶は大丈夫?」
「えっ!?は、はい」
それを聞いてから由弦は、珉珠に緑茶ラテを入れた。
「緑茶の成分には、ストレスや不安を和らげる効果があるらしいんだ。市販のものだけど、これ飲んで少し気持ち落ち着かせて?すぐには無理だろうけど、しばらく座って休んでるといいよ……傍にいようか?って、オレの役目じゃないか。オレは会議に戻るね?」
由弦は苦笑いしながら、会議室に戻って行った。
一人取り残された珉珠は、力が抜けたと同時に、今になってから、さっきのことが怖くなった。
もう少しだけ、由弦に傍にいてほしかったのは嘘じゃない。
―――― 由弦……
それにしても、由弦の考えていることが本当に分からない。
慶太に見せしめのために、自分にわざと関わって来たり、それに、さっきの件に関しても、味方してくれたり。
セクハラに関しては、今までもそうだったように、いくら訴えても常務クラスに、「臨機応変に!」だとか「女性の立場っていうのをわきまえろ!」ある役員に関しては、「女は触らせてなんぼだろ!女の仕事はそれ程度か茶汲みくらいだろ!」と言うものもいて、常にバカにされた扱いだった。
自分が入った当初は、ホントに女性の風当たりもきつかった。
ここ近年、大分マシになって来たとは言え、まだまだ女性を軽視、女性を低く見たりするところは消えない。
会社が大手で歴史が古ければ余計?
今回もまた、笑って過ごすか、きっと自分が櫻木に頭を下げなければならないと思っていただけに、さっきのは由弦の対応は、胸がス~っとして、救われた思いがして、とても嬉しかった。
そして改めて、由弦を見直した。
由弦の入れたお茶を飲む珉珠。
「美味しい……」
そこにふと、この間のバルコニーでの事が頭を過った。
紫苑が由弦の頬にキスをしたこと。
―――― 由弦はもう一人ではない。誰かのもの。でも由弦は美桜さんと……別れたの!?
珉珠の中に疑問が生まれた。