漢江のほとりで待ってる
高柳に貢献している由弦に、ある事件が起こる。
臨時株主総会目前のことであった。
その日、由弦はあるセミナーに出席していた。
その日にあえて弦一郎は、幸せ続きが途切れないように、婚約パーティーの時に発表した、慶太を社長に就任させたと、一早く各企業や社内メールで報告していた。
その三日後には、高柳慶太の社長就任式を執り行うというものだった。
そして、付け加えるように、由弦と紫苑の婚約も報告した。
「高柳慶太氏、社長就任へ」
「高柳グループ御曹司、高柳由弦氏とあの大手菓子メーカーのご令孫、鷹司紫苑さんご婚約へ」
「高柳兄弟ダブル婚!!」
マスコミ各社は、ネタの尽きない高柳、セクハラの次は、社長就任と弟の婚約!と食いつて報道した。
三日後、生放送のビデオカメラマンや報道カメラが多く集まる中、フラッシュを浴び、晴れ晴れとした顔で、慶太は社長就任の挨拶をした。
由弦がこの報道を知ったのは、出張先での事だった。
慶太の社会就任式も、由弦の怒りが届く前に、滞りなく終わった。
このことに、由弦が黙っているはずもない。
弦一郎は、由弦の気持ちに追い打ちをかけるように、本家で、慶太の社長就任と由弦の婚約祝いのパーティーを開くと言い出した。
その案に喜んだのは慶太一人だけだった。
雅羅も珉珠もこの時ばかりは、この親子の浅はかな考えと馬鹿さ加減に、呆れてというよりも、諦めが先に立ち、何も言う気が起こらなかった。
「恥さらしな!セクハラ問題もずっとうやむやにして、己の恥「高柳の」を曝け出した上に、こんな時に社長就任なんて!父さんは何を考えてるんだ!オレに断りもなく、勝手に婚約までさせて!ここまでオレをバカにして、どこまでオレを怒らせれば気が済むんだ!」
由弦は怒りで震えた。
また社内でも、慶太の社長就任をみんなが喜んでいるわけではなかった。
特に若い世代と女性は由弦を支持していて、今の状況からも分かるように革新的な由弦が社長になると思っていただけに、今回の社長就任劇は、その層から強い反感を買った。