漢江のほとりで待ってる

「殺されなかっただけマシだ!蚊帳の外はお前だけじゃないようだぞ?由弦。ワシも招かれざる客だ」

騒ぎに気付き、離れから弦吾がやって来た。

「父上……」我に返った弦一郎が言った。

「弦一郎よ、ワシはもう用無しか?会社の行事や孫の結婚のこと、なぜワシの所には噂でしか入って来んのだろうか?ワシを舐めるなよ?今でもお前の一人や二人くらいは簡単に潰せること忘れるな!しかしお前は一体何をしたんだ。由弦をないがしろにして来た分、その償いをしたいとワシに啖呵切って連れ戻したはいいが、大切にするどころか、あの子から全てを奪い、好きなおなごとも引き離し、自分と同じような思いをさせてワシに対する当てつけか!お前のやっていることはただのエゴだ!ひたすらあの子を傷付けているだけではないか。そりゃ由弦もやり切れんだろ。今回ばかりは、完全に由弦の逆鱗に触れたようだな。ワシは由弦を全面的に後押しするつもりだ。高柳の行く末をその目で確と見るがいい!」

「……」

「しかし慶太、お前は誰に似たんだ!その卑しい性格。ま、子は親の背中を見て育つというから、それ程度の親なんだろう、弦一郎もワシも」

「お爺様にそこまで言われる筋合いはございません!」慶太は反論した。

「慶太さん!これ以上私に恥かしい思いをさせないで頂戴!」と眉をひそめて、雅羅が言った。

「雅羅さん、構わんよ?言わせておきなさい。過ちを己自信が気付かない限り、この子は一生、後悔後を絶たずだ。さて、今度はワシ等が、あの子の、二五年分の苦しみを受ける番だな」

そう言い残して、弦吾は離れに戻って行った。

< 285 / 389 >

この作品をシェア

pagetop