漢江のほとりで待ってる
リビングに戻って来た珉珠。
「珉珠君、あいつに関わるのは止めたまえ!見ただろ?あれがあいつの本性だ!それとあいつの秘書をするのも許さない!しかし落ちた物を食べるなど、離れている間によほど卑しく育ったんだな」と由弦を軽蔑した慶太。
「彼に、何を吹き込んだんですか?」珉珠は、床に座り込んでヘタっている慶太を、見下ろしながら、静かに言った。
「何のことだ?」
「今、彼の体が不自由なこと、知ってらしたんですか?知っててあえて?」
慶太に確かめながらも、あの野球大会の日のことを思い出して、珉珠は自分も責めた。
「……」珉珠の静かな怒りに、慶太は何も答えられなかった。
確かにあの日、由弦らしからぬ動きだと珉珠は思った。でもまさか、そんなことになってるとは思ってもいなかった。
ただ、由弦の心の中の問題で、調子が悪いだけなのだと思い、見て見ぬ振りをした。
でもそれは違った。
慶太との結婚で、由弦を吹っ切ることばかり考えて、あんな態度を取って、どうしてもっと寄り添えなかったんだろうと悔やんだ。
珉珠は、その時の由弦の気持ちを思うと、胸が痛んで泣けて来た。
「由弦さんの気持ち無視するから怒らせたのよ。私は何度も反対していたはずよ」雅羅が振り絞った声で言った。
弦一郎は、由弦が自分のことを「あんた!」と言ったことにショックを受けていた。
まさか、こんな風に暴れるなんて……
「オレはずっと一人だったんだ!今更親父面すんな!あんたなんか、親父でもなんでもない!」
由弦の言葉が耳から離れない。
—————— 自分は本当に何をやって来たんだろう……暴君は私じゃないか。
弦一郎がそう思った時には、時はすでに遅しだった。