漢江のほとりで待ってる
招集してから二週間後、由弦の誕生日前日に、臨時株主総会が開かれた。
弦一郎や慶太も出席した。
株主達もぞくぞくと集まって来た。
そこに、弦吾と椿氏も現れた。
その顔触れに、会場がどよめいた。
弦一郎もそれを見て、一瞬で血の気が引いた。
それで本当に自分の身の危険を感じた。
張り詰めた空気の中、由弦の登場。
総会は始まり、厳かな空気の中、臨時株主総会は始まった。
まず、現在の高柳の業績について、黄金期よいも著しく低迷していることを伝えた。
そして本題に入り、このような低迷期に、不祥事があったことを挙げ、その不祥事の内容を説明し、由弦は自ら被害者として立った。
その事件の首謀者を兄である高柳慶太と主張した。
さらに、首謀者の父である弦一郎が、今回、殺人未遂事件まで起こした息子、慶太を容認し、反省させることなく、その息子を社長就任させるため、自分が不在の中、また社内でも反発の多い中、強行に及んだと指摘した。
「由弦!何を言い出すんだ!」慶太は声を荒げた。
「このようなことは許されるべきことではない!よって、不祥事に関わった、社長、高柳弦一郎氏と副社長、高柳慶太氏の解任を申し立て致します。そして私、高柳由弦を、社長として選出します」
と慶太の声を遮るように、由弦は述べた。
弦一郎と慶太はまさかの由弦の発言に驚いた。
自分達が解任にまで追い込まれるとは思いもしなかった。
—————— 勝手に鷹司社長のお孫さんとの婚約を決めたことを根に持っているのか?でも招集は二週間も前だ。ならば、それ以前から由弦は私を恨んでいたのか?私はここまで由弦を怒らせていたのか?
弦一郎は、由弦の態度が変わり始めた頃の前後を思い返していた。
予め、由弦のためにお膳立てされていたことも、今日のメンバーを見れば理解できた。
自分に味方するものはいないと分かった。
負けを確信する弦一郎。
そして評決に入り、結果は、弦吾が由弦の後ろ盾になったことから、椿氏の力添えもあり、他の株主達も賛成に加わり、議決権の過半数を超え、弦一郎と慶太は解任され、由弦は社長就任が決定した。
由弦の圧倒的勝利だった。
慶太は、この結果に頭が真っ白になった。
弦一郎は、目を閉じたまま黙っていた。