漢江のほとりで待ってる

珉珠は、まともに、口も利かない由弦が眠りにつくまで傍にいて、朝は由弦が目覚める前にやって来て、起きる頃には傍にいるよう努めた。

曇りの日や雨の日は、不調に顔を歪める由弦の手足をマッサージしてやった。

頭痛の酷い時は、そっと髪を撫でて傍にいた。

―――― 後遺症に苦しむあなたを、こんなにも心苦しむあなたを、一人になんて出来るわけないじゃない……

サイドテーブルに置いてある、痛み止めの薬を見る度、珉珠は胸を痛めた。

それと、あまり食事も取らないことも心配だった。

ある日の朝、珉珠は卵スープを作った。

起きて来た由弦に、

「召し上がれ。熱いから気を付けて?」

テーブルに座らせそう言った。

座ったものの由弦は、自分の右腕を強く掴んだまま、何だか遠慮してるような、食べるのを躊躇っている感じだった。

「どうしたの?あまり食べたくない?」

と珉珠は気にして声を掛けた。

「あまり見ないで……」ボソッと由弦は言った。

「えっ!?あぁ、ごめんなさい」

慌てて珉珠は席を立って、由弦から少し離れキッチンへ移動した。

しばらくすると、カチャーンッ!と何か床に落ちる音がした。

見ると、スプーンが落ちていた。

由弦はそれを見つめながら、項垂れていた。

それから、それをゆっくり拾った。

スープを眺めながら、一点を見つめたまま、まるで落ち込んでいるようにも見えた。

大きな溜息を吐いたあと、席を立とうとした。

「食べないの?」

珉珠が聞くと、うなずいてそのままリビングルーム行ってしまった。

「食べないと、体力もつかないわよ?元気になってリハビリもして」

珉珠がそう言うと、由弦はふて腐れた態度でダイニングに戻り、座ったかと思うと、突然スープを手で救い上げ食べ始めた。

「……!!」

珉珠は驚き、慌てて由弦のもとに駆け付け、その手を止めた。

「何やってるの、由弦!火傷するじゃない!」

珉珠の手を振り払うと、またスープに手を入れた。

「由弦!いい加減にして!」

「じゃぁ殴れよ!また殴ればいいだろ!!だから嫌いなのって!!」

珉珠を睨みつけた。

「そんなこと思ってない!」

手拭きタオルを濡らし、由弦の手を拭きながら、思わず声を荒げる珉珠。

珉珠はやり切れない思いと情けない思いが混同した。

二人の気持ちが噛み合わない。

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