漢江のほとりで待ってる
「ぶつけてくれていい!だから私を遠ざけないで?私はあなたと離れたくない!これは執着じゃない!ただ素直にあなたが好きだから、それだけ!記憶が戻ったあなたに、知らなかったとは言え、私はたくさん傷付けた。記憶が戻らなかったとしても、離れるべきじゃなかった。何度謝っても足りないくらい」
小刻みに震える由弦を、珉珠はきつく抱き締めた。
「本気で殺そうと思ったって言っても、あなたはしなかった。あなたには出来ない、見くびってる訳じゃない、あなたはそういう人。どんな辛いことがあっても誰にも何も言わず、一人で耐えて来た。辛いことなんてなかったみたいに、いつも笑ってた。優しいあなたをこんな風にしてしまったのは私のせい。もう絶対に一人にはしないから、何でも私に話して?私も包み隠さず話すから。ねっ?由弦。誰だってあんな目に遭わされたら、憎しみだって抱いてしまう、人間なんだから感情を持っていて当然!あなたは幼い頃からいっぱい辛いことに耐えた来たのに、今までそれを我慢できたことの方が不思議なくらいよ?誰も恨まず、真っ直ぐ素直に育ってくれて、ほんとにありがとう。あなたのお母様に代わって言いたいくらい」
珉珠の言葉に、由弦は声を漏らして泣いた。
それから、少しずつ由弦は心は開き、二人は打ち解けて行った。
ご飯も珉珠が食べさせようとすれば、それにちゃんと応えるようになった。
天気のいい日には、部屋を出て外を散歩するようにもなった。
少しずつ少しずつ前向きになり始めていた由弦。
ただ、由弦から、珉珠に触れたり手を伸ばしたり、何か望むことはなかった。
それからペンを握り、絵も描き始めた。
でも絵は、指が動かず、上手くペンが握れない。
自暴自棄になり、ペンを放り投げ、紙もめちゃくちゃに破り捨てたりもした。
そんな由弦を珉珠は、文句一つも言わずに支えた。
眠りにつく由弦の顔を見た時、頬の傷痕に目に入る度、珉珠も苦しんだ。
その傷をそっと撫でながら、色素沈着を抑えるクリームを塗り始める。
「消えるかどうか分からないけど」そう思いながら、毎晩眠る由弦の頬に塗り続けた。
互いに、一喜一憂しながら、一緒に時間を過ごした。