漢江のほとりで待ってる

甲斐と宇海が成長を遂げている頃、慶太にもまた心に変化があった。

由弦の暴走を止めるために、弦一郎と共に会社に訪れていた慶太。

この時ちょうど、慶太は、仲里と宇海のやり取りを、近くで見ていた。

盗み聞きするつもりはなかったが、マーケティング部は由弦がいた部署でもあり、この日もここにいるかもしれないと、久し振り来た会社を見て回っていた、その時のことだった。

宇海を諭そうとしている仲里を見直した。

自分にも、仲里のように親身になってくれる上司がいたなら、自分の考え方やこの状況も、少しは変っていたのだろうか?と思いながら仲里を見つめていた。

慶太の中で、少し彼女の存在が変わる。

いつかのパーティーで、彼女が「無神経なオッサン!」と自分たちに言い放った言葉を思い出して、慶太は思わずふっと笑った。

相手が誰だろうと、はっきりと言う、怖いもの知らずなとこ、筋が一本通っている。

—————— けど、好きな人の前では……由弦の前では、本当の自分が表現できない、実はとても繊細な女の子。

慶太は少し落ち込んだ。

彼女も由弦が好き。

一体自分と由弦は何が違うんだろう……慶太は今まで考えもしなかったこと思った。

その時、仲里の、「親切と優しさの違い—————— 」言葉を思い出した。

「心に寄り添えるかどうか、なら、私は前者だな。何となく分かる気がするよ」慶太は呟いた。

自分に足りないのは、「情」だと言うこと。

父の顔色を伺いながら、機嫌を損ねないようにと生きていた。

いつしか、心を持たぬ、ロボットのように、ずっと機械的に動いて来た慶太。

いや、心は捨てた、もうずっと前に。

利益のためなら、非情にならないと戦っていけない。

欲しいものは、奪い取れ!それが誰かの大切な人であっても、相手の気持ちなど無視してでも、自分の望みを叶えろ!

しかし、由弦が来てから、嫉妬する自分がいることに戸惑い、自分にも心があったと改めて気付かされた。

由弦がいると、なぜか自分をコントロール出来なくなる。

色んなことを考えながら、慶太はふと我に返った。

—————— 今の由弦がそうなり兼ねない!

< 350 / 389 >

この作品をシェア

pagetop