漢江のほとりで待ってる
甲斐と宇海が成長を遂げている頃、慶太にもまた心に変化があった。
由弦の暴走を止めるために、弦一郎と共に会社に訪れていた慶太。
この時ちょうど、慶太は、仲里と宇海のやり取りを、近くで見ていた。
盗み聞きするつもりはなかったが、マーケティング部は由弦がいた部署でもあり、この日もここにいるかもしれないと、久し振り来た会社を見て回っていた、その時のことだった。
宇海を諭そうとしている仲里を見直した。
自分にも、仲里のように親身になってくれる上司がいたなら、自分の考え方やこの状況も、少しは変っていたのだろうか?と思いながら仲里を見つめていた。
慶太の中で、少し彼女の存在が変わる。
いつかのパーティーで、彼女が「無神経なオッサン!」と自分たちに言い放った言葉を思い出して、慶太は思わずふっと笑った。
相手が誰だろうと、はっきりと言う、怖いもの知らずなとこ、筋が一本通っている。
—————— けど、好きな人の前では……由弦の前では、本当の自分が表現できない、実はとても繊細な女の子。
慶太は少し落ち込んだ。
彼女も由弦が好き。
一体自分と由弦は何が違うんだろう……慶太は今まで考えもしなかったこと思った。
その時、仲里の、「親切と優しさの違い—————— 」言葉を思い出した。
「心に寄り添えるかどうか、なら、私は前者だな。何となく分かる気がするよ」慶太は呟いた。
自分に足りないのは、「情」だと言うこと。
父の顔色を伺いながら、機嫌を損ねないようにと生きていた。
いつしか、心を持たぬ、ロボットのように、ずっと機械的に動いて来た慶太。
いや、心は捨てた、もうずっと前に。
利益のためなら、非情にならないと戦っていけない。
欲しいものは、奪い取れ!それが誰かの大切な人であっても、相手の気持ちなど無視してでも、自分の望みを叶えろ!
しかし、由弦が来てから、嫉妬する自分がいることに戸惑い、自分にも心があったと改めて気付かされた。
由弦がいると、なぜか自分をコントロール出来なくなる。
色んなことを考えながら、慶太はふと我に返った。
—————— 今の由弦がそうなり兼ねない!