漢江のほとりで待ってる
慶太と弦一郎は、由弦のいる社長室に向かった。
入って行くと、
「これはこれは、お二人揃って何のご用でしょうか?まさか会社に戻してくれと頭を下げに?」
由弦はバカにしながら、鼻で笑って言った。
「土下座すれば許してもらえるのか?それに、この間の件は誤解だ。私はただ、青木君に渡すものがあって来ただけなんだ」
「土下座なんてする気もないくせに、よく言うよ!仮にもオレを殺そうとした人間が、どの面下げて、会いに来たんだ!」
黙り込む慶太。
「すまない由弦。本当に申し訳ないことをした」そう言って弦一郎が頭を下げた。
弦一郎の行動に、驚く由弦。
「何から話せばいいか……何をどう話しても、お前にして来たことは、決して許されることではないのは重々承知だ。何度も何度もお前を傷付けて、希望を持たせるようなことをしては、裏切ったり、ないがしろにして来た。がしかし、お前が生まれて来なければよかっただなんて、一度も思ったことなどない!これだけは信じてほしい!お前が生まれた時、どんなにお前の母さんと喜んだことか」
「ふざけるな。今更……何勝手なこと言ってんだよ!」
「そうだ!勝手なのも分かっている!」
「父上だけが悪いんじゃない、お前の心をここまで荒ませたのは、私にも責任がある。それにみんなお前を心配してる。もう十分だろ?父上も私も会社を辞めた。それ以上に何を求めているんだ!お前の憎むべき相手は私だろ?私一人に向ければいい!これ以上を周りを巻き込むな!」
慶太も口を挟んだ。
「いいんだ、慶太、お前のことも、兄弟の間に溝を作ったのもこの私のせいだ」
「いえ父上、私が勝手にひがんで行ったんです」
「そうじゃない、私がみんなを巻き込んだ上に、何一つ守られなかったんだ」
二人のやり取りを見ていた由弦は、うんざりな顔をした。
「お二人が、親子間の距離を縮められるのはよろしいですが、余所でやってもらえますか?それにあなた達親子とオレは何の関係もない」
冷め切った顔で由弦は言った。
「由弦そんなこと言わないでくれ!本当にお前が心配でここに来たんだ。全てを水に流してくれとは言わない。お前との時間を取り戻せるなら取り戻したい。それに青木君を恨んではいけない!彼女は何も悪くないんだ。あんなに愛し合っているお前と青木君を、私は自分の欲のために、高柳のためしか考えず、また面倒なことから避けようと、彼女に、記憶のなかったお前に、本当のことは言わないよう頼んだのはこの私だ。自然にお前の記憶が戻ればいいと軽く考えていた。いや、記憶が戻らなければいいとさえ思ったことも……そうすれば全て上手くいくと思っていたんだ」
と弦一郎。
「そんな事よく言えたね?オレの記憶が戻ったら全て上手くいくだって!?なら何で兄貴と彼女を婚約させた?愛し合ってるって分かってて何でそんなことしたんだ!言ってることとやってることが矛盾してるだろ!」
「それは……」
言葉に詰まる弦一郎。