漢江のほとりで待ってる
週末のある日、由弦の状況を風の便りに聞き、心配で、紫苑が小田切邸にやって来た。
一番奥の庭園は、青々とした紅葉の外側の葉を、強い陽射しが照り付け、その反射で白く輝き、眩しかった。
それに加え、蝉の声が鬱陶しいほど、さらに暑さを増すようだった。
「毎日暑いですわね~。それにしても素敵なお庭」
紅葉を見上げ、紫苑は言った。
「ほんとですね、溶けてしまいそうだ。お元気でしたか?」
笑いながら由弦は言った。
「わたくしはとっても元気です。わたくしの方が由弦さんのお加減先に聞こうと思ってましたのに~、由弦さん、お体の具合はいかがですか?」
「ふふ、ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ?随分と体も動くようになりましたから」
「それは良かったです!でも~、それなのに、なぜ浮かないお顔をされているのですか?」
「えっ!?」
「何か心配事でも?……おそらく聞いてもお答えにはならないでしょうね。なので、あまり何でも思い詰めないでくださいね?」
「紫苑さん……」
「あ、それと、婚約のことも気になさらないでください。お爺様には厳しく言っておきましたから!」
「あはは。厳しく?それは良かった」
由弦の笑顔を見て、紫苑は嬉しくなった。
「あの方とは仲良くされてますか?」
「あの方!?」
「秘書をされてる~、青木さん!?って方です」
「どうして?」
「お二人がとても惹かれ合っているようにお見受けして」
黙り込む由弦。
「ごめんなさい、何も知らないのに……」
「いえ、気にしないでください」
「何かと狭い世界なので、お二人のことも耳に入ってきます。もし、わたくしとの婚約が原因なら—————— 」
「違いますよ。紫苑さんは関係ない。だから気を揉まないで?」
「そうなのですか?」
紫苑は、由弦が本当のことを話してくれないことに哀しくなり、思わず俯いた。