漢江のほとりで待ってる
そんな紫苑の表情を見て、由弦は、なぜか彼女が可愛らしく思えて、珉珠とのことを話してやった。
「—————— だから彼女は、兄を好きでいながら、何も自分と兄の間をうろつかなくてもいいのに、こんな体の僕に!?同情してくれたのか、そばにいてくれた、ただそれだけなんです」
「そうでしょうか?」
「……!?」
「それにそんな言い方良くありませんわ。本当に好きでなければ、由弦さんの中に、ご自分だけの記憶がないのに、傍になんていられないと思うのです。それでもずっとお傍にいてくださったのでしょう?わたくしならきっと、哀しくて泣いてしまって、何もできませんわ。由弦さんが同じ立場になったらどうでしょう?そのお方もどんなにか辛かったはずです。その方のお気持ちも考えて差し上げてください」
この時、紫苑の言葉で、自分が入院中ずっと傍にいてくれた、珉珠のことを思い出した。
義務的なものは一切感じられず、ただひたすら傍にいてくれて、優しい声で自分の名前を呼んでくれた、温もりしかなかった。
それは、彼女の愛そのものだった。
「それと、忘れないでください、由弦さんの優しい心。わたくしは信じています。今は雪山のように冷たく閉ざされていても、いつかきっと溶けて出して、由弦さん本来のお姿に戻られるって……だから今は本当にお辛いのですね。それは由弦さんの絵にも表れています。博覧会以前の絵は、とても激しい情熱を帯びた由弦さんの思いが胸を打って来る、そんな感じでした。だから、初めて見た時は、とても衝撃的だったんですのよ?でもそれ以降は、一見優しさに溢れた絵に見えますが、引いて見ると、深い哀しみと強い怒りが訴えて来ました。苦しい思いを、どこにも持って行けず。独りで抱えて、それを全て絵に閉じ込めていらしたのですね。どんなにか、お辛かったことでしょう……」
紫苑は涙を浮かべた。
「紫苑さん……ありがとう。僕の絵をそんなふうに評価してくださるなんて」
「ふふ。わたくしは、CGグラフィックデザイン界の偉才と言われる、高柳由弦さんのファンでもありますから」
「ホントにありがとう」
健気に笑う、紫苑の頬を伝う涙を、そっと由弦は拭った。
—————— そんなことされては、もっと好きになってしまってうではありませんか、由弦さん!諦めに来たのに、優しくしないでください!
紫苑はグッと歯を食いしばった。