漢江のほとりで待ってる
「わたくしね?あの時の言葉を撤回しに参りましたのよ?」
「あの時?」
「いつかのレセプションパーティーで、由弦さんが酔い覚ましにバルコニー行かれてた時……」
紫苑は由弦に告白し、頬にキスしたことを思い出していた。
「あ~っ!」
「あ、あれはわたくしも酔っていまして、そ、その、忘れてください!」
紫苑は急に恥ずかしくなり、赤くなった顔を手で仰いだ。
「そうなの?僕は僕なりに、本気で受け取っていましたけど」
「……本当なら、撤回なんてしたくありません。でも、由弦さんと青木さんの間には誰も入り込めないと分かったんです。だから、わたくしは身を引きます!由弦さんがお好きになった方だから、だからわたくし諦めますのよ?由弦さんには幸せになってほしいのです」
俯く紫苑を、由弦は優しく見つめた。
「その代わりと言っては何ですが、これからはわたくしのお兄様になってください!」
「お、お兄様!?」
「はい!わたくし、ずっとお兄様がほしくて。だから今日からお兄様らしく、わたくしのこと紫苑とお呼びください」
由弦を見上げて紫苑は笑った。
「えっ!?そんな急に言われても~」
「ダメですか?」
「ダ、ダメじゃないけど、呼び捨てはちょっと~、せめて紫苑ちゃんではダメですか?」
「ん~、仕方ありませんわね。あとお兄様らしくしてほしいので、丁寧語は止めてください。それくらいのお願いは聞いてください」
「ふっ、分かりました」
「ほら~さっきいったばかりなのに~」
「あ~、分かったよ紫苑ちゃん」
由弦の呼び方に、紫苑の笑顔が一段と明るくなった。