漢江のほとりで待ってる
病院の一室、珉珠は目を覚ました。そして辺りを見渡し、横に慶太がいることに気が付く。
「ここは?……由弦は?」
まだ頭がぼんやりした様子の珉珠が言った。
「あ~、さっきまで君の傍にいたよ。事故に巻き込まれてね、覚えているかい?由弦が君を助け出したんだ、危険を顧みず」
慶太に言われ、その時の光景が、薄っすらと珉珠の頭に蘇る。
抱き上げられながら、自分の名前を何度も呼ぶ声を思い出した。
—————— やっぱり由弦だったんだ!
微かな記憶を辿っていると、
「すまない、青木君、君をこんな目に遭させてしまって」
慶太が暗い声で言った。
「謝らないでください。それに事故なので、仕方ありません。誰のせいでもありませんから、ご自分を責めないでください」
二人の間に沈黙が流れる。
その数十分前、由弦は、ベッドに寝かされた珉珠の傍にずっといた。そっと手を握りながら。
医師から、「傷も浅くて済み、軽い脳震盪を起こしていましたが、意識も一時的なものと思うので、すぐ回復するでしょう。念のため、明日また検査してみましょう。大丈夫なら退院しても構いません」と言われた。
「よかった~」
大きな溜息と共に安堵した由弦。
それから、眠る珉珠の髪をそっと撫でた。
遅れて慶太が病室にやって来た。
由弦は立ち上がり、部屋を出ようとすると、
「許してくれ由弦!こんなことになるなんて。それに私は一人だけ助かろうとしたんじゃ—————— 」
「分かってるよ」
慶太の肩を軽く叩いて、由弦は出て行った。
すぐさま慶太はあとを追った。
「由弦!」
振り返る由弦に、
「彼女の傍にいてやってくれ!」と慶太。
「オレ仕事があるから」
悲し気な笑みを残して、行ってしまった。