漢江のほとりで待ってる
「どうしても止めが刺せない。兄貴達からしたら、オレは痛くも痒くもないような事ばかりしてる。復讐して思い知らせてやりたいのに」
「前にも言ったけど、心底人を憎めないのがあなた。あなたはそういう人、優しい人なの」
「でもオレは、たくさんの人をリストラしたんだ」
「それは、今の高柳に必要だった」
「違う。父さんや兄貴はそれをせずにやって来た」
「当時と今は状況も違う!いくら、あなたのお兄様が盛り返したと言っても、やはり、株価までは回復に至ってない。だから本当の所、信頼回復はされていない。あなたは、身を切る思いでやった。誰もが避けて通っていたことに、あえてメスを入れた。女性問題にしてもそう!あの部長のセクハラは、ここで働く女性にとって苦痛でしかなかった。上の人間は誰も聞き入れてくれない。女性社員が嘆願書出しても、この問題に対して、向き合おうとはしてくれなかった。それほどこの会社は保守的で男社会だった。だから自分の身は自分で守るしかなかった。泣き寝入りがほとんど。それくらいのこと、軽く交わせないようではどこへ行ってもやって行けない!とまで言われた。そんなデリケートな問題に、あなたは立ち向かってくれた。知ってた?由弦、あれから随分環境が変わったのよ?女性が生き生きと働ける会社に変わって行った。ううん、それだけじゃない、あなたが来てからというもの、若者が、働きたい企業に、高柳は選ばれるようになった。誰かを泣かせた分、誰かを幸せにしている。あなたはちゃんと取り返してる。今の高柳グループは、新たに目まぐるしい成長と発展を遂げている。あなたは、お父様やお兄様とは違うやり方で高柳を守ったの」
「環境が良くなったって言うなら、どうして会社を辞めたの?オレが兄貴から無理矢理会社を奪ったから?兄貴と結婚する手前、オレと無関係と思わせるため?」
「違うの!あなたが社長になったからとか、お兄様のためとかじゃない!あなたを傍で見ていられなかった。だから、違う形で傍にいようと思ったの」
「そんなふうには思えなった。オレが社長と決まったあの日、あなたは会社を辞めた。それと同時に、その時オレは全てを失ったんだ。あなたにはわからないだろ?あの時のオレの喪失感なんて」
「喪失感を味合わせようと思って辞めたんじゃない!傍にいようと思って辞めたの」
「ならどうして、オレだけに何も言わず故郷に帰ろうとしたの?」
悲し気な目で由弦は訴えた。