漢江のほとりで待ってる
残された由弦と慶太。
「ここにいても仕方ないから、オレは先に帰るよ」
由弦は、気まずさに耐えかねて、立ち上がった。
「そういえば、お前、スマホの番号は変わったのか?」
慶太は引き留めようとした。
「壊れた。正式には壊したかな。それ以来スマホは持ってない。だからオレとは誰も連絡付かないと思う」
「そうだったか……」
「うん。物凄くアナログな生活を送ってる」
「さっきの話だが、青木君も仲里君のことを知っているのか?どうするつもりだ?」
「どうしようか?好きなんだろ?彼女のこと。渡さないよ?珉珠さんも優那さんも」
「優那さん!?ほんとにそんな関係なのか!?お前二股は良くない!どちらも泣かせるだけだ!」
「兄貴には言われたくない!人のものを汚い手を使って奪うような兄貴には」
「……すまない。本当に申し訳ないことをしたと思っている。ほんとにどうかしていたんだ。だが青木君とはほんとに何もない!信じてくれ!」
「婚約までしてたのに?クリスマスも一緒に過ごして、彼女の誕生日まで祝っておいて、その上ペアウォッチまでした仲なのに?何を信じろと言うんだよ!」
「ただお前に嫉妬してた。才能溢れて、人からも好かれて、その上会社まで奪われてしまうんじゃないかと。一番怖かったのは、父上を取られてしまうんじゃないかってことだった。だからあえて、お前の大切にしているものを奪ってやろうと思った」
「それが珉珠さん?」
「ああ」
「で?奪えた?」
「いや、彼女の心さえ動かせなかったよ。彼女もお前のために、私がお前を傷付けるのを止めようとして、私のそばにいただけだった。でもその時はそれでよかった。お前が苦しむ姿を見たかったから。けど、気付いたら全てがどんどんエスカレートして、お前をあんな目に……」
「邪魔なオレを、消したかった」
「違う!本気で殺そうだなんて思ってなかった、信じてくれ!ただ出しゃばるなと、痛い目に遭わせたらそれだけでよかったんだ。私にとっていつでもお前は驚異的な存在だったから」
「少なくとも、義母様達は本気でオレを殺そうとしてたよね?」
「……あの時の母上達の心情は私にも分からない。私のために行き過ぎた愛情表現だった。皆どうかしてたんだ」
「くだらない。後継者争いなんかにオレが巻き込まれるなんて。そんなもの興味すらないのに、兄貴達はオレを怒らせたんだ」
「すまない。ほんとにすまない。でも今は、心からお前に詫びたいし、私のできることがあるなら何でもしたいと思っている。母上だって、母上が一番後悔していると思う。こんな風にならないと分からないのが、ほんとに情けないが、お前が私の弟で良かったと思っている。例え血の繋がりが無くても、私にとってお前は自慢の弟なんだ。」
慶太の心の変化に、戸惑う由弦。