漢江のほとりで待ってる
延期と言い渡されたまま時間は過ぎて行った。
慶太はすかさず、Awakenの社長一条に、今回のCMの件で、Mecha-Kakuseiブランドのグッズが当たると言った、プレゼント企画を申し出た。
一条からの返事は、CMの件を全て由弦に委ねるのであれば、了承するとのことだった。
慶太はその条件を飲んだ。がしかし実際はそうではなかった。
由弦には任せることなく、自分の思いを貫いた。
そんなことが行われていることとは知らずに、由弦は慶太の所へ行った。
「兄貴、CMの件どうにかならないかな?」
「無理だ!それにここは会社だ!兄貴である前に私は副社長だ!」
「あ、ごめん。副社長、オレに一任すると言われましたよね?一体何でこんなことになるんですか?」
「クライアント側がCDが気に入らないと言って来た。しかし、うちとしても、お前だけを切るわけにはいかない。だから白紙に戻したんだ」
「はっ!?だったらオレだけ切ればいいじゃないか!!延期だのと気を持たせるようなことして!端からあのチームでさせる気なんてなかったんだろ!CM作りバカにしてんのか!!どれだけの人間と時間と金が費やされてると思ってんだ!無意味なものや無駄なものを嫌う兄貴がこんなくだらないことするなんて!」
「だったら、お前だけ辞めてくれるか?」
冷めた目で慶太は言った。
「ああ!!喜んで身を引くよ!」
由弦は強気に言った。
「分かった。制作チームには私から伝える」
慶太の言葉を聞いて、そのまま副社長室を後にした由弦。
慶太の思惑通り、誰にも何も伝えられることなく、水面下でCM作成が行われ続け、CMも完成し納品までされ、あとは放送されるのを待つばかりとなった。