漢江のほとりで待ってる
「そこまで……」
「……!?だからお前は甘いんだよ!ナメられるんだよ!お前は確かに優しい。でもお前が思ってるほど、兄上は良心的ではないぞ!企業を背負って立つ者は冷酷だ!まして、お前のような経歴を持って高柳家に現れたのなら、尚のことだ!はっきり言う!副社長にとってお前は目の上のたん瘤だ!だからお前も心してかからないと、いつ寝首を掻かれるか分からないぞ?すでにもう始まってるかもしれない」
「オレは、後継者なんて考えてないし!財産も何も」
「お前がそうだとしても、周りがそれを許さない!お前の所は何かと複雑だからな……ちょっとした噂を耳にしたんだが、それはこっちで調べることにして、お前もそのことは肝に銘じて仕事をしろよ!親友として言ってるんだ。そして会社を経営する者として意見するんだ。気を引き締めろよ?高柳!」
そう言いながら、一条は由弦の腕時計を何気に見た。
「分かった」
由弦が出て行ったあと、一条は行動を起こす。
―――― きっと高柳、お前は企業で縛られるより、一クリエイターでいる方が、その方がお前の力を発揮できるんだろう。お前は自由でなければならない。お前は企業戦士にはなれない。なぜなら、お前の中にある最高の長所である、優しさが邪魔をしているからだ。それは欠点でもある。お前がそれを捨てた時、押しも押されもしない起業家として、経営者としての力が発揮されるだろう……
一条は思った。