漢江のほとりで待ってる
そこへ江南課長がやって来た。
「あら?甲斐さん!あなた頑張ってるじゃないの!」
「はい!愛梨~、専務のためなら何だって頑張ります!!」
「専務!?」
そう言うと江南は甲斐のデスクを覗き込んだ。
メモには、「専務奪還計画!」と書かれていた。
江南は溜息をつくや否や、
「甲斐さん!そんなことをしてないで、ちゃんと仕事をしてちょうだい!あなたの企画書いつ提出するつもりなの?会社は遊びじゃないのよ?いつまでも大学生気分でいてもらっては困るわ!それに、大人の魅力とか?にわか仕込みや付け焼き刃なんかで身に付くものじゃないの!しっかりと今から、自分のレベルを上げるために何か身に付けた方がいいわ!将来何か役に立つようなものをね?」
また大きな溜息をつきながら、頭を抱えて去って行った。
「は~い。分かりました~だ」
甲斐は去っていくお局様の背中に、あっかんべえをした。
それぞれの思惑を抱いたまま、静かに全て丸く収まったように思えた。
狙っていた以上のあらゆる相乗効果を生み出した結果に、一人だけ喜べない人間がいた。
由弦のことを世間が取り上げれば上げるほど、慶太の憎しみは増すばかり。
「あいつは私に汚点どころか、恥までかかせた。頭を下げるなど私の経歴にあってはならない!この借りは必ず返してもらう!」
慶太の憎悪が渦巻く。