漢江のほとりで待ってる


CM作成も終わり、久しぶりに落ち着いた休日。

由弦は、珉珠に逢えないならと、朝早くからドライブがてら、都会を離れ、趣味の一つでもある乗馬をしに厩舎へ。

自分の馬にも久しぶりに会いに行った。

「元気だった?エトワール!」

馬にブラッシングしながら話しかけた。エトワールも嬉しそうに、ブルブルと鳴いた。

そして準備を終え、エトワールの背中に乗り、ゆっくりと歩き出した。

初夏の森林を抜け湖へ。太陽の光が、さざ波にキラキラと揺れていた。

そして立ち止まり、

「綺麗だね?エトワール。見える?」

エトワールに話しかけながら、辺りを散策し景気を楽しんだ。

またしばらく歩きだすと、木々に囲まれた、ひっそりと立つ白い建物を見つけた。

「こんな所に教会があったんだ?ドラキュラがいるかも!」

昼下がり、その教会からたくさんの人が出て来た。

「うわ!エトワール!人が出て来たよ?血を吸われないうちに帰ろう!」

由弦は幼いころ見た洋画で、教会では呪いの儀式が行われ、生贄を差し出す、あるいは、ドラキュラの住処、そのイメージが強かった。

だけに、信者に捕まると肝を抜かれるなんて思っていたりした。そして急いで厩舎に帰った。

「こわかったね~エトワール!オレを無事にここまで運んでくれてありがとう。ご褒美だよ」

そう言うと由弦はエトワールに好物の角砂糖を与えた。

「珉珠さんはどんな休日を過ごしたかな?ゆっくり出来たかな?穏やかな休日ならいいのに」

顔を出すエトワールを撫でながら、由弦はふと珉珠のことを思った。


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