漢江のほとりで待ってる


次の日、専務室に、今日のスケジュールを確認するため、珉珠が入って来た。

珉珠の顔を見るなり、

「淋しかったぜ~!逢いたかったよ~!!何だろ~たった一日逢えないだけでこんなにも恋しいなんて~なんてな!?昨日は穏やかに過ごせた?嫌なことはなかった?」

由弦はそう言いながら、珉珠に抱きついた。

「おはようございます。専務。一気に気持ちを言ってしまうのね?気に掛けてくれてありがとう。とても穏やかに過ごせたわ。由弦は?素敵な休日だった?」

「オレ?ん~あなたがいたらもっと素晴らしい休日になったと思うけど、ま、そこそこな休日だったかな?」

「ふふ。そう?そこそこならよかったわ。では、本日もどうぞよろしくお願い致します。専務。取材がまた一本入っていますので、それは午前中に。午後から会議となります。一週間後には上海視察になっています、がこの件に関しましてはその都度お伝えいたしますので」

「何だろ?オレは代表取締役兼専務になってもさ?現場に出なきゃいけないんだね?」

「あら?その大きな椅子にふんぞり返っていたいの?」

「そうじゃないけど……あとさ?会議も何か堅苦しいじゃん?あれもっと人との境界線失くして、気楽に議題に取り組めるようにした方がよくない?関係ない人間が出席してるような気がする。何で決算報告でもないのにいつもズラリとオッサンが集まるの?的外れな意見しか言わないのに、他人の意見には否定しかしないんだ。自分は痛手を被らないから言えるんだよ!ぼけ~っとただ会議に出席してる人間もいるし、今のやり方は効率悪すぎ!議題が出来れば責任者を立てて進めて行くべきだ!これと言って考えがある訳でもなく、解決しないのに堂々巡りの意見ばかり。無責任だから偉そうにあ~だこ~だ言えるんだよ!時間の無駄!」

「だったら専務、あなたが変えて行けばよろしいのでは?その意見をそのまま会議で発言ください」

「えっ!?オレが?オレに発言権なんてあるの?オレは所詮お飾りでしょ?」

「違うわ!あなたは代表取締役兼専務なんですから。決定権は専務にあります。確かに周りの意見を聞いて一番いい方法を見つけるのが賢明。でもまとまらないものなら、開拓のため強行に出なければいけない時もあると思います。それがあなたの役目。自信を持って?」

珉珠はうなづいて由弦に答えた。

「青木秘書!あなたを秘書にしておくのが勿体ないくらいだよ!なぜうちの会社は有能な人間を放っておくんだろ!あなたのような人がもっと重要なポストにいるべきなんだよ!」

力説する由弦に珉珠は微笑んだ。

この時由弦は、以前、甲斐が言っていた、副社長が決定権を彼女に委ねていると話していたことを何気に思い出して、さっきのことで何となくうなづけた。

珉珠に話すと、自信を持たせてくれる、背中を押してくれる。決して、口出しているのではない。

彼女は自分にとって、欲しい答えをくれる、だから安心して相談できるんだと思った。


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