漢江のほとりで待ってる


一歩専務室から出れば、待機室に珉珠がいる。用事があれば彼女はすぐ来てくれる、自分に用がなくても彼女の方から、仕事の用ではあるが来てくれる。こんなに嬉しいことはない。

由弦は用事も無いのに、待機室で作業してるいる珉珠に会いに行ってみたり、真剣な眼差しでパソコンに向かう珉珠の頬に、いきなりキスしてみたり。それに驚く珉珠。

口を突き出してキスをせがむ由弦に、辺りを気にしながらもそれに応えてる珉珠。それに満足して笑う由弦。

誰もいないエレベーターに二人で乗った時には必ず手を繋いだ。扉が開くギリギリまで手を離してくれない由弦に、珉珠はハラハラさせられる。ガラス張りのビルディングは外側からもそ様子が見える。そんな誰が見てるか分からないから、珉珠はいつも冷や冷やさせられながら、由弦に振り回されていた。

でも不思議と嫌じゃない。あまり経験してこなかった、恋を楽しんでるような感覚だった。

「専務、午後からのご予定ですが~」と専務室に珉珠が入って来た。

由弦は立ち上がり、彼女の方へ行き抱き締め、そしてキスをした。

「専務、人が来ます」

「来ないよ」

彼女を愛しむかのように優しく抱きしめる。

「今夜、ご飯一緒にしよう?」と由弦。

「はい。楽しみにしています」珉珠が答えた。

二人の落ち着いた、平穏な日々が続いていた。


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