漢江のほとりで待ってる


「ねぇ?由弦?こんな偶然ってあるのね?」

「そうだね。最初のはホントに純粋な偶然だったと思う。でも今日のは違うよ?あなたは今日の出会いを偶然だと思ってる?」

由弦の言うことに、うなずいて不思議そうな顔をする珉珠。

「違うよ?偶然に逢えるように、ここをあえて通ったんだ。日曜日、断られるたびに、何も知らずにエトワールとここを散歩してたんだ。最初、あの教会からあなたが出て来た時は、ホントに驚いた。そしてあなたの日曜の先約を確かめるため、ここを何度も訪れてた」

「何度も!?」

「そう!日曜もあなたに逢いたいから。いや、どうしても自分の中で納得が行かなくて……あなたを疑ってる訳じゃないけど、でも何で、日曜は会ってくれないんだろうって。何で日曜はダメなんだってその一言が聞けなくて。つき合ってるのに、オレの彼女なのに、踏み込めない。いつもオレとあなたの間には隔たりがある。だから……」

「それで納得の行く答えは見つかった?」

うなずく由弦。

「オレはこんな嫌らしい奴なんだ。わざと偶然に会えたように仕向けて、出会うべくして出逢ったと必然を装う。でも男なら誰だって使う手口だ。好きな女の子をどうしても手に入れたいって思う、まぬけな男の浅知恵」

珉珠は軽く息を吐くと、

「でもその手を内を明かすあなたは素直だわ。そんなあなたを嫌らしい人間というなら、私にも言えることだし、他の人もそうだと思う。それに私の方こそ、素直に打ち明けてさえいれば、あなたを苦しめることはなったのに。距離を感じさせるような淋しい思いまでさせてたなんて……ごめんなさい」

由弦の背中にもたれた珉珠。

沈黙の中、爽やかな、ひんやりとした風が吹き抜けた。


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