漢江のほとりで待ってる
教会をあとにして、
「はぁ~すっげぇ緊張した~!最後名前を呼ばれた時はびっくりしたよ」
「教会に初めて来た人は、ノートに名前を書くの。そして最後にみんなの前で紹介するの」
「あぁ、だから入った時、受け付けみたいな所でなんか記入してたんだ?」
「そう。だからあなたの名前を書いてたのよ?」
「そか」
「初めての体験はどんな感じだった?」
「ホントに緊張した、ほとんど覚えてないよ」
珉珠は優しく笑い返す。
「でも素敵な、貴重な体験をさせてもらったよ、ありがとう。それに、何だか心地良い気分だ」
「そう?どういたしまして。そう言ってもらえたらよかったわ」
「うん……」
初めての教会での体験を得て、由弦は色んな気持ちが込み上げた。
彼女は、自分を嫌いなんじゃない、これが彼女のペースなんだ。
牧師の話に耳を傾け、祈りに来る人達とお茶をしながら話をして過ごす。
唯一心を穏やかに出来る一時。
教会へ行くことも彼女を支えて来た一部なんだ、その時間を奪ってはいけないと理解した。
それが彼女の日常であり、また休日の過ごし方、いや、何よりも犯してはいけない聖域なんだと由弦は悟った。
あれだけの人がいて、同じ信徒の中に、心通わせる相手が出来てもおかしくはないはずなのに、彼女は純粋に祈りに来ていると知った。
そして、「ただ一緒にいたい、休日も一緒に過ごしたい」そう思う自分の身勝手な気持ちを恥じた。
今日の珉珠の自分にしてくれたことを思うと、情けなくて涙さえ出て来た。
「どうしたの!?由弦!?」
涙する由弦を見て、動揺する珉珠。
「分からない。何でだろ、涙が勝手に出て来る。きっとオレの中にある卑しさを、神様に見透かされたからかもしれない。そして少しだけ洗い流してもらったかも」
「由弦……」
「今度からオレ、教会には行かないよ。あなたの大切な時間を守りたい」
由弦は素直にそう思った。
次からはエトワールに会いに行くのもセーブして、厩舎へ行かない週も増やした。自分がそこにいると、きっと珉珠は自分を気に掛けたり、厩舎にまで来てしまうかもしれない、それでは礼拝の意味がない。教会での時間を心穏やかに終えて、そのまま何も考えず、気分よく帰ってほしいという願いを込めて、彼女にプレッシャーを与えないための、由弦なりの配慮だった。
もし、エトワールに会いに行くなら、珉珠には内緒で、各々の時間を楽しむよう、由弦は心掛けた。