漢江のほとりで待ってる
またこうも言った。
「オレは、宗教のこと、ましてキリスト教のことなんて分からないけど、でも間違ったとらわれ方をしちゃダメだと思う。神様が、仮にオレ達をお作りになったと言うなら、その神である親が、我が子が苦しんでるのを喜ぶはずはない。そんな親なんていない。
珉珠さん?はじめはオレとの宗派の違いに苦しんでたんじゃない?そのことも、結ばれる相手が、必ず同じ宗派でないとダメなんて、神様は思うはずがない。そんな狭い考えを持つのは、この俗世間に這いつくばるオレら人間だよ。もし同じ一つの宗派で統一しようとするなら、それは神じゃない!人間が生み出した邪悪な支配欲だ。
きっと本来の神様は、互いの宗教を尊重し合えるよう導くはず。我が子が幸せなら、それが一番だと思われるはずだ。神様がオレ達に与えてくださったのは、この命と、人を慈しむという素晴らしい心。誰かを愛するという感情。
オレは、あなたとの出会いは運命だと思ってる。たまたますがった神が違っただけで、上を見上げりゃみんな同じ空で繋がってる。誰もが信じる道は一つなんだと思う。人間社会では、互いの信じる神を尊重し合いながら、オレ達自身も互いに尊重し合い、やって行けると思う。
話は逸れてしまったけど、何を言われようと、あなた自身がしっかりしてればいいってだけのことだよ。教会で出会ったから絶対的に結ばれなきゃダメなら、そこに通う人みんなにも言えることじゃない?そんな取るに足らなようなことに、とらわれないで?絶対的なものなんて何もない。それと、本来の目的、あなたにとっての教会へ通う意味?を忘れちゃいけない。自分の気持ちに誠実であってほしい。
関係ないけど、オレは~あなたが好きだ。ただそれだけのこと」
「由弦……あなたは天使になり損ねたの?だからこの地上に舞い降りたの?」
珉珠は、由弦の言葉に思わずそう言った。
「オレが?だったら、この地上にいるみんな、翼を忘れて来ただけだと思うよ?そして自分が何をすべきか忘れがちになる。愛は国境を越えられる。愛は互いの宗教を尊重し合える。愛は性別をも越えられる。万人が幸せであるために、神様はそれを可能に出来ると信じたから、オレ達を存在させたんだよ。オレ達が翼を失くしたのは、その使命を果たすため地上に舞い降りた、そう考えたらこの世のつじつまも合わない?」
「そうね?なんだか……時折あなたって、思いもかけないことを言うのね?普段からは想像もつかない」
「そう?」
由弦は珉珠にそっと笑い掛けた。珉珠もまた微笑み返した。
珉珠は、由弦の言った通り、教会へ通う意味を改めて自覚し、自分に誠実でいると共に、慶太の行動や発言は気にしないでいようと思った。