〜starting over〜
それから、お店に嫌がらせをされたり、私が学校に行ってる時間帯に家にも何度も押し寄せてきてたらしい。
信じていた友人の裏切り。
その上、家族、店を巻き込んでの借金問題。
お父さんはどれだけショックを受けただろう。
玲奈と真輝の顔が脳裏を過り、頭から振り払った。

「それで?お父さん達、どうなっちゃうの?」
「……連帯保証人は、主催兼務社……この場合は佐伯と同等の返済義務が生じる。例えば、佐伯が夜逃げをしていなくても、貸金が義兄さんに請求されても文句も言えない。しかも、佐伯が破産や免責手続きをとって借金を免れても、連帯保証人の返済義務までなくなるわけじゃない。残ってしまったものは、連帯保証人である義兄さんが返済しなければならない」
「じゃあ、お父さんも自己破産しちゃえば借金なくなるんじゃ……」
「自己破産は、あくまで最後の砦だ。自己破産すれば、個人信用情報機関に事故情報として記録される。そうなると、住宅ローンやクレジットカードとか審査は通らないし、財産だって清算されてしまう。官報にだって掲載される。社会的信用を無くすんだよ。まぁある程度年数がたてば事故情報から抹消されるとは言うけど、すべて1からの出直しだ。仮令、兄さんが今と同じ店をやるにも、横つながりのある業界だと破産イメージが付いて回って、取引は躊躇われるだろう」

聞きなれない難しい単語の嵐に眩暈がする。
難しい内容に全然頭に入ってこない。

「この狭い地域では、噂はすぐに広まる。白い目で見られて商売はし難いだろう。かと言って、どっかに引っ越しても、すべてを失って出直すのだってタダじゃない」
「じゃあ、お父さん達は、佐伯おじさんの借金を返済するの?」
「今、義兄さんが駆けずり回ってる」
「……私が居たら、ダメ……だったの?」
「貸付業者の行動に危機を感じたから、俺におまえを預かってほしいと連絡があった」

私を安全圏へ。
それは、取り立てが苛烈になってきたって事を示唆しているんだろう。

「それっていつまで?私も高校辞めて働いたら、少しは足しになるんじゃない?」
「さっきも言っただろう。危険だから預かったと。子供とはいえ、女なおまえに何かあってからじゃ取り返しがつかない」
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