敏腕メイドと秘密の契約
「よく来てくれたね。弥生さん」

「待っていましたよ。こんなに可愛らしい方が天音のお嫁さんになってくれるなんて嬉しいわ」

両親は、まるで本物の婚約者を連れてきたかのように喜んでいる様子を見せた。

「婚約と同居を許して下さり有り難く存じます。ふつつかものですが、どうか御指導よろしくお願いいたします」

と、挨拶を返す"弥生"。
演技とわかっているのに、天音は嬉しくてたまらない。


「なんだ、天音。嬉しくてたまらないと顔にかいてあるぞ」

「そうよねー。ずっと憧れてきた"弥生さん"と一緒にいられるんだものね」

両親の意味深な言葉に、天音は顔を赤くしてそっぽを向いた。暗に中学生の頃のことをいっているらしい。

"弥生"は演技の一環と思っているのか、やはり恥ずかしそうにうつむいた。

「ははは、微笑ましいな」

四人がリビングのテーブルにつくと、ほどなくして夕食が運ばれてきた。

仕事や会社のこと、趣味の話等に花を咲かせたあと、二人は2階の自室に移動することになった。

「弥生さんの荷物は運び込んであるわ。足りないものは私が補充しておいたから、何か他にも必要なものがあったら私に言ってちょうだい」

と、天音の 母・笙子がそう言うと、両親はリビングを後にした。

「じゃあ、行こうか」

天音は藍の手をとると、2階の自室に案内した。
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