敏腕メイドと秘密の契約
"えっと,,,どうしようかな"

午前9時。

二度寝から目覚めた藍は、自分を抱き締めて眠る天音を眺めながら苦笑していた。

既成事実を作ってしまった。
そういうことをしておいて
『ウッソー?』と、とぼけるほど子供ではない。

ずっと心に住みついていた初恋の相手だ。後悔は全くしていない。

なにせ、この4日間、
萌え死にしそうな程、天音にときめいているのをひた隠ししてきたのだから。

しかし,,,。

天音は、まだ三浦HSの顧客だ。

しかも,,,。

問題は何も解決していない。

"どうしたものか,,,"

と藍が頭を抱えていると、天音が再び寝起きのキスをしかけてきた。

「ちょっ、あ、天音。起きて」

数時間前と同じ展開。繰り返されるキス。天音の"寝起きキス魔"は半端ないらしい。

「,,,やっと目が覚めた」

チュッというリップ音を残して、天音は満足したように身を起こした。

「シャワー浴びてくるね」

そういって、
床に落ちたルームウェアを身に付けると、笑顔でバスルームに向かった。

藍はその様子ををぼんやりと見送ると、ゆっくりと体を起こし、自分もルームウェアを身に付けた。

"難しいことはコンピューターを解析したあとに考えよう"

藍にとっては、ルートクラッキングよりも恋愛問題の方が難しいらしい。

本能のままに行動した結果を何も解決せぬまま、藍は台所へ向かうと朝食の準備を始めた。

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