敏腕メイドと秘密の契約
食事を済ませた藍は、明言した通りに洗濯と掃除を始めた。

天音だけ寛ぐ訳にはいかない。

「じゃあ、俺は先にパソコンを触っとく」

そう言って、天音はリビングに例のノート型パソコンを持ち込み、ディスプレイ画面を立ち上げた。


使用人には
『レセプションパーティの準備と片付けで疲れているので、二人とも自室に籠る』と伝えてある。
部屋を出ればいつでも、藍は変装しなければならないからだ。

両親は、二人が抱えている案件をすべて理解しているので
「問題解決のために全力を尽くしてほしい」
と、先程、内線で連絡してきた。


"それにしても"

素顔のまま、もくもくと洗濯(室内に乾燥室あり)や掃除をしている藍を見て、天音は満面の笑みを浮かべた。

こうしているとまるで新婚のようだ。

"いや『まるで』ではなく『現実』にしてみせる!"

天音は決意を新たにパソコンと向き合った。

「天音、コーヒーいれたよ」

昨日から電源を入れっぱなしにしていたパソコンは、完全にブリーズしていた。

キーボードを操作して、何とかコントロールパネルに入ろうとするもののうまくいかない。

「どう?」

「知らない言語配列だな」

藍はコーヒーをテーブルに置くと、天音の操作するパソコンの画面を凝視した。

「あれ、これって,,,」

藍は眉間にシワを寄せると、急いで自室に戻り、自分用のパソコンを持ってきた。

そして、ものすごい勢いで自身のパソコンに何かを入力したかと思うと、あっという間に問題のパソコンに侵入した。
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