吐露するキズ跡
「そうなんですか。…でも、申し訳ないですけど、面白くなしでしょうけど、あたしはノーマル…だと思うんです」

「ノーマルか、バイなのよね」

ニマッと笑っていう。

そう。好みの女の子が現われていないだけなのかも知れない。

だから、バイだって可能性は否定できない。

それから、あたしの耳元に、

「タメナガの好きな子って、どの子なの?今日来てる?」

あたしは、つい。顔が緩む。

この状況で、返事を言い惜しむなんて、出来ない。

「…来てますね」

「頼んだバンドの子だね。うわー。見ちゃおう。どの子?どの子?」

「…教えません」

「いいわよ。当てるから」

ノックの音がして、ドアが開く。

ふわっとかわいいタイプの、女の子が入ってくる。

白の、タキシード姿。

…先輩の、パートナーさん。

あたしは目を見開く。

その人は、先輩を目で探して、見つけると、微笑んだ。

可憐に花が開くように。

凄く。凄く幸せそうに。

だから、あたしの心臓も反応する。

ぎゅーって絞られる。

うん、これ、嫉妬だな。

< 50 / 62 >

この作品をシェア

pagetop