吐露するキズ跡
実は先輩が今日のこと、彼女のこと、話してくれた時から、薄っすら感じてた。

あたしの先輩なのに。って。

それが、相手を目の当たりにして、大爆発した感じ。

急に物凄く寂しくて、辛くなる。

何で、みんな、『おめでとう』って言えるんだろう。

あたしの先輩取られちゃうのに。

みんなだって、自分の大事な友達を、取られちゃうんだよ。

当たり前なんだけど、先輩の中で、あたしが閉める割合って、完全に完璧に完膚なきまでに、彼女さんに負けてて。

それを、今、目の前で見せつけられて。

「じゃあ、また後で、先輩」

先輩の、とろける笑顔を、なるべく見ないように部屋から出た。

くそー。

寂しいじゃないか。

あたしは、先輩の後輩って立場で出席してるから、この披露宴に招かれた人に、誰も知り合いがいないのだ。

友達なんか知らないし。

ふらりと会場になるレストランに入り込む。

物音がしたから、何か手伝えないかなあって。

と、

誰かが、ドラムセットを組み立てていた。

「ったく、あいつら…」

呟いて、顔を上げる。
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