ホテル御曹司が甘くてイジワルです
いつもみるからに仕立てのいいスーツ姿の彼は、お仕事をしているのは間違いないだろうけど、いったい何者なんだろう。
きれいに磨かれた革靴や、袖口からのぞく時計。
彼の身に付けているものすべてが一見しただけで上質なものだということがわかるし、上品な身のこなしや余裕の溢れる雰囲気を見ると、普通の会社員とは思えない。
私がそんなことを考えていると、長谷館長は腕を組み真相を探る探偵みたいな顔をしながら指先で顎をなぞる。
「あの人、夏目さん目当てで通ってるのかもしれないねぇ」
「私目当てですか? 私の解説を気に入って何度も足を運んでもらえるならうれしいですけど……」
私が首をかしげると、「そうじゃなくて」と苦笑いされてしまった。
「夏目さんのことが好きなのかもよ?」
館長の言葉に、思わず頬が火照ってしまう。