ホテル御曹司が甘くてイジワルです

「俺から誘ったのに放っておいたから、もしかしたら機嫌を悪くしているかもと思っていたけど、予想外に楽しんでくれているみたいでよかった」
「はい。せっかくなので、遠慮なくいただいてます。お仕事は片付いたんですか?」
「ある程度」

私の質問にさらりと答える。
いつもはっきりとものを言う清瀬さんが『ある程度』と言うくらいだから、やらなきゃいけないことはまだあるんだろう。

だけど、私をほうっておいては悪いからと出て来てくれたんだ。
清瀬さんの気遣いを察して、さっきまで感じていたさみしさが消えていく。

「あ、清瀬さんも少し食べませんか? 甘いものは……」
「あまり得意じゃない」
「じゃあ、サンドイッチを」

そう言って、お皿にサンドイッチを置いて差し出そうとすると、近づいてきた清瀬さんがテーブルに片手をついて上体をかがませる。

今日は白いシャツにベスト姿で、かがむと艶のあるネクタイがはらりと垂れた。
それだけなのに、妙に無防備な感じがする。

「あの……」

戸惑いながら視線を上げると、「食べさせて」と言ってこちらを見た。

食べさせるって、私が……?

一瞬戸惑ったけど、今までお仕事をしていた清瀬さんに素手でもって自分で食べろというのも失礼かと思い、おずおずとサンドイッチを口元に差し出す。

わずかに首をかたむけ、口を開く清瀬さん。唇の間から綺麗な並びの白い歯が見えた。
ドキッとしてサンドイッチを持つ手が震えると、彼は喉の奥で小さく笑って私の手首を掴む。
そして食べやすいサイズにカットされたサンドイッチをひと口で食べてしまう。

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