ホテル御曹司が甘くてイジワルです
「確かに、国内外合わせ全てのホテルでその理念を守り続けることは素晴らしいことだ。だけど、どこへ行っても同じというのは、それぞれの個性や可能性を殺しているということでもある」
「個性や可能性?」
「もっと、その場所でしか味わえない感動と驚きにあふれた時間を体験できる施設を作りたいと思った」
「それが、あの坂の上のオーベルジュ……」
改築中の商館を思い描き、思わずため息がこぼれた。
「どこか懐かしい気持ちになれるあの街の景色や雰囲気。少数のゲストのために地元の食材をふんだんに使い、惜しみない手間をかけて作られた料理。スタッフひとりひとりがそれぞれ考え画一的ではないサービスを提供し、訪れたゲストには自分だけの隠れ家に来たような特別な時間を過ごしてもらう」
「豪華できらびやかなプレアデスホテルでは、体験できない時間ですね」
「そういう新たな施設を作れば、プレアデスグループ全体としても今まで以上にゲストに満足してもらえるホテルに成長していけるんじゃないかと考えた」
清瀬さんの熱い思いを聞いて、胸がドキドキと騒いてしまった。
プレアデスホテルだってあんなに素敵なのに、彼はより上質で特別な場所を作り上げようとしているんだ。
最初に言葉を交わしたときは、目的のためには手段を選ばない冷たい御曹司だなんて思っていたけれど、彼には彼の信念があるんだ。